土の中のこと
母親の実家の墓地は、遺体を焼かずに木桶に入れて土中に収める埋葬方法、土葬でした。
私も高校生のころまでお盆には毎年、祖母やその村の方々が葬られている土葬場へお詣りへ行っていました。
故人の名前が書かれた墓標も木でできているので年月と共に半分以上朽ちているものも多く、
それはもうゲゲゲの鬼太郎の世界。
真夏も薄ら寒く、ピンとした空気感が漂っていました。
それが15年ほど前に火葬、墓石へと変わりました。
そんな土葬墓地の風景を見てきた影響もあるのか、
「いのちあるものは全て土に還り、そしてまた新たないのちが土から生まれる」ということを体験知として自分なりに解しています。
美しい樹木や花、美味しい野菜なども土壌がなければ育たないし、逆に土は生物が栄えてこそ生きたものになれます。
真っ暗な土の中で無数の生物がもちつもたれつの関係で生きていて
わたしたち「人」も土の中の微生物を含む自然界の一員だということも忘れてはいけないことです。
さまざまな図書を読んでそういう視点になった時から
土で育ったものはまた全て土に還していきたいと、事務所の敷地内に自然物を土に還すためのBOXを制作しました。
BOX内では落ち葉はその形を失い、硬かった雑草の茎は柔らかく藁のようになっています。
掘り起こせばミミズとダンゴムシがものすごくたくさんいて、多くの草や落ち葉の分解をしてくれています。
わずか半年から1年足らずで元の形がなくなっていることに感動しました。
さらに土の中のことにもとても興味が湧いてきて
無数に広がる菌糸(きんし)を見つけたり、土の中の虫の役割を調べたりすることが今とても楽しくてBOXの中に入っては1人でブツブツ、ニヤニヤしています。
▲土の中に無数に広がる菌糸。菌糸の活動によって土の中ではいろんなネットワークが生まれ、さまざまな栄養・水分・空気が繋がりながら行き来しています。
こうして土の中の生物による分解や活動によって出来上がった土に触れると
これまでは自分や子ども、人の体のためという視点で農薬、除草剤、殺虫剤、過度な人工肥料を避けていましたが、
土の中の微生物が健全に生きていけるようにこの生態系をできるだけ守っていきたい、と思います。
落ち葉や雑草をゴミとして出すとそれを燃やすための燃料も必要としますが、土に返してあげると生物が喜び、土壌が豊かになる…
このサイクルを循環させていきながら、これからも土の中のこと深々と学びたいと思っています。