以前の住居は、168坪という大きな敷地目一杯に建築されていました。
長い年月の中で家族構成が変わり、大きな家の中でも使用される部屋は限られていきました。
古くなった住居の建替えとして計画する際、建物面積を小さくするというご要望はありませんでしたが、住まい・畑・お庭を手の届きやすい距離感で設計することで外部を有効的に利用することができ、生活動線は短くなり、建主のお母様やご家族の方がより暮らしやすくなることから延床面積23.8坪の平屋をご提案しました。
アプローチ傍の塀は広い庭に間合いを取る役割でありながら、裏側は外用の水場や作業台が設置されています。
畑で採れた野菜をそのまま洗うことや庭仕事の効率を上げます。 敷地内には小さくまとめた住まいを囲うように東西南北の窓の先に樹木を配置し、庭には野菜畑と果樹の実る木、オリーブやミモザなど施主様の趣味である手仕事に利用できる植栽を配置しました。
また、以前のお住まいから受け継いできた大きな庭石も地面に埋め込むことで大きさを変えながら据え置きました。
リビングはダイニングのフロアより2段下げているためソファやフロアに腰掛けた時の目線は地面に近く、軒下のウッドデッキが内と外を結びます。
リビング同様にお母様の寝室は南に面し、寝室の開口部も玄関代わりになっています。
以前の住居の樹木や石を利用していることや外壁等が自然と馴染む素材感であることから、これまで長年住み慣れた地域に溶け込むような佇まいとなりました。
設計 松尾由紀
造園 fanlandscape
写真 野村宜弘